日本教育史学会

日本教育史学会は1941年から毎月の例会を開始し、石川謙賞の授与と日本教育史学会紀要の刊行を行う、日本の教育の歴史についての学会です。

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第648回例会(オンライン実施)木村政伸氏の研究発表【プログラム・ノート】

第648回例会(オンライン実施)木村政伸氏の研究発表【プログラム・ノート】

 <第648回例会>
*日 時:2022年1月29日(土曜日)  午後3時~5時 (オンラインで実施)
*参加事前登録の締め切り:2022年1月26日(水曜日)  午後11時59分
*プログラム:
 ☆「西鶴が描いた17世紀の子育てと学び」
                                木村 政伸氏
                     司  会   大戸 安弘 氏

【プログラム・ノート】
 近世が「文字社会」となったことは、かなり浸透した見方だといえようか。その契機は経済活動の活発化や統治上の文書主義などいろいろ考えられる。では、読み書き能力が広く浸透することで社会や人々の生活はどう変わったのであろうか。こうした問いに応えるのは容易ではない。地方文書などは統治・被統治の関係性の中で作成されたものであり、教訓書などはあくまで道徳を説くものであることから、ナマの生活をそこから読み解くのは難しい。日記なども可能性があるが、量的質的な限界が横たわっている。
 そこで注目したのは、文学作品である。とりわけ17世紀末に大量の作品群を刊行し、多くの読者を獲得した井原西鶴の作品群に着目した。西鶴の作品は、町人、武家に限らず、また男女の両方にわたっており、きわめて多様である。これらの作品群には、主に三都で暮らす人々の姿が豊かに描かれているが、とりわけ重要なのは人々の感情や考えを知ることができることである。西鶴の作品を紐解くことから、子育てや学びなどの実際の姿について多くの知見を得ることができるのではと考えた。
 こうした着想から、すでに「西鶴作品にみる17世紀後期の識字能力と教養の形成」(『九州大学大学院教育学研究紀要』第20号、2018)、「一七世紀における遊女の教養形成と文字文化」(『日本教育史学会紀要』第10号、2020)、「『子はうき世のほだし』考-西鶴作品から見る子ども忌避論―」(『日本の教育史学』第64集、2021)を発表した。
 この一連の論文の中で、西鶴作品が17世紀後期という時代性をよく表現していると考えられる現象や、文字社会化していく都市部の生活の変化などを明らかにしてきた。それらの中は、文学作品故に可能となったものもある。
 もちろん、文学に書かれたものはまるごと現実に発生した現象ではないことはいうまでもなく、文学作品から歴史を描く際には、十分な検証が必要である。しかし文学であるから知れる人々の感情や思考を読み取ることも可能であろう。
 今回は、このようにこれまで続けてきた西鶴作品の分析から見えてきた研究の可能性と課題について、報告を行いたい。
              〔木村政伸氏 記〕

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