日本教育史学会

日本教育史学会は1941年から毎月の例会を開始し、石川謙賞の授与と日本教育史学会紀要の刊行を行う、日本の教育の歴史についての学会です。

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2020年1月25日(土) 第638回例会:萩原真美氏【プログラム・ノート】

2020年1月25日(土) 第638回例会:萩原真美氏【プログラム・ノート】

日時:2020月1月25日(土曜日)午後3時から5時

会場:立教大学 池袋キャンパス 太刀川記念館 1階 会議室
〒171-8501 東京都豊島区西池袋3-34-1

アクセス:「池袋駅」下車 西口より徒歩約7分

プログラム:占領下沖縄における社会科成立史にみる教育政策方針―「沖縄の道」に着目して―
萩原真美 氏(お茶の水女子大学)

【プログラム・ノート】
 本発表は、拙博士学位請求論文「占領下沖縄における社会科成立史研究」(お茶の水女子大学、2019年3月22日授与(甲号第295号)に関する報告である。拙博士論文は、全Ⅲ部構成で、序章、第Ⅰ部 占領下沖縄における社会科成立の背景―六・三・三制導入に至る経緯―(第1章~第4章)、第Ⅱ部 占領下沖縄における社会科前史―人文科公民、地理、歴史―(第5章~第8章)、第Ⅲ部 占領下沖縄における社会科の成立(第9章)、終章からなる。
 拙博士論文では、占領下の沖縄において、日本の戦後教育改革の目玉の一つとされた社会科が、いかなる過程を経てどのような性質の教科として成立したかを検証した。沖縄の社会科の場合、占領下の沖縄に最も早く導入された本土の教育制度である六・三・三制に伴って設置された。社会科成立の直接的な要因である六・三・三制を導入するに至るまでの過程において、占領下沖縄における教育政策の実施にあたり、沖縄の独自性を尊重し、新たな沖縄を建設していこうとする精神(姿勢)である「沖縄の道」が重視された。その一方で、本土との結びつきを保ちたいという考えである「本土並み」を志向する動きもあり、「沖縄の道」と「本土並み」の間で揺れ動きながら、占領教育政策が実施されていた。
 ところで、「沖縄の道」とは、米軍の対沖縄占領政策方針である、沖縄の独自性を尊重するという方針に基づき、沖縄の教育行政側が考案した用語である。1946年にガリ版刷り教科書の編纂方針である「初等学校教科書編纂方針」と併せて出されたと推察される、「一、編纂方針の具体化」に、「沖縄の道(新沖縄建設の精神)」という項目が挙げられたのが初出である。具体的には、戦時下とは異なる、沖縄の固有の歴史等に立脚した沖縄固有の教材が盛り込まれた教科書を作成し、それに基づいて教育を行うことで沖縄の再建を目指すもので、戦時下の教育指針であった「皇国の道」を改め、「沖縄の道」と称したと推察される。
 本発表では、占領下沖縄において教育政策を進めるにあたり重視された「沖縄の道」に着目することで、占領か沖縄における教育政策の特徴やその方針に込められた沖縄復興への思いを示したい。拙博士論文の序章、第1章及び第2章の教科書編纂方針に関わる部分を中心に、同方針の立案に大きくかかわった人物である仲宗根政善の言説と照らし合わせながら、同方針に込められた教育による沖縄復興への思いをみていく。
〔萩原真美氏 記〕

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