日時:2018月10月27日(土曜日)午後3時から5時
会場:立教大学 池袋キャンパス 12号館 地下1階 第2会議室
〒171-8501 東京都豊島区西池袋3-34-1
アクセス:「池袋駅」下車 西口より徒歩約7分
プログラム:淺石長雄(東嶺)と『教育病理学』―『児童病弊』の発見とその対応―
下山寿子 氏(高崎商科大学)
【プログラム・ノート】
本報告者は、これまで「近代日本における『教育病理学』の移入と普及」というテーマのもとに戦前に刊行された教育雑誌を主な素材として「教育病理学」という研究分野がどのように移入され、いかに普及し、その過程でいかに変容したかを歴史的に明らかにしてきた。
「教育病理学」は、言うまでもなく西欧で産まれた近代教育学の一分野であり、その起源は18世紀にあり、19世紀半ばには明確なディシプリンとして成立したとされている。
ところで、このディシプリンの和訳の一部である「教育病理」という語は、独立して異なる形の普及を見せてきた。すなわち問題を含む教育状況を表現する、学術的なタームがそれである。学術的・専門的なディシプリンの名称の一部でありながら、一般性の高い汎用的呼称も持つという二重性を与えられてきたのが「教育病理」というタームである。
本報告者が手がけたい研究は、このような二重の意味を持つタームである「教育病理」を視野に入れながらも「教育病理学」という専門的な学問分野に着目し、その移入と分化そして変遷を、専門的な雑誌メディアの報道・論説・記事を手掛かりに分析しようとする研究である。
より具体的には本発表のねらいとその範囲を限定し、これまで着目されることがなかった人物で、自らを「教育病理学者」と名乗った淺石長雄(東嶺)の経歴となぜ「児童病弊」に着目したのか、そして雑誌『教育実験界』に掲載された「児童病弊」に関する記事の特質とその変化について考察し、特別な支援を必要とする児童生徒に見られる複合的な原因によってあらわれた複雑な現象が、どのように発見され、どのようにとらえられ、どのように対応され、そしてどのように絶え間なく模索されてきたのか、これらの問いにこたえてみたい。
〔下山寿子氏 記〕