<第646回例会>
*日 時:2021年11月27日(土曜日) 午後3時~5時 (オンラインで実施)
*参加事前登録の締め切り:2021年11月24日(水曜日) 午後11時59分
*プログラム:
☆「労働史からみた戦後女性教員史の考察:日教組婦人部の産休代替・育児休業制度化過程を中心として」
跡部 千慧 氏
司 会 前田 一男 氏
【プログラム・ノート】
私は、これまで、戦後の女性教員の動向を労働史に位置づけて研究してきた。今回は、博士論文をもとにまとめた著書『戦後女性教員史』をもとに、これまでの研究を報告し、今後の研究課題を論じていく。
『戦後女性教員史』は、女性教員職において結婚・出産後の継続就労が可能になった過程を、産休代替教員制度と育児休業制度を要求した日本教職員(以下 日教組)婦人部(現 女性部)の労働運動に着目しながら明らかにしたものである。
女性教員は、小学校で1969(昭和44)年度に女性教員率が5割を超えて以来、結婚・出産後も就労継続する労働者として着目されてきた。日教組婦人部は、女性の労働権確立を目指して運動し、その成果として1960年代から1970年代にかけて産前産後休暇(以下 産休)の保障や育児休業が制度化された。高学歴女性が「主婦化」の担い手となった時代の渦中において、女性教員は、こうした制度を利用しながら、その多くが結婚・出産後も継続就労してきたという点において、注目に値する女性労働者群である。
すなわち、女性教員職への着目は、「主婦化」の動きを底流に抱えつつも、他のオルタナティブな展開への可能性を秘めた重要な時代であった1960年代を、相対的高学歴層でありながらも継続就労した層の実態に分け入って把握することになる。これは同時に、教育界の言説とその担い手の経験という、相反する世界を捉えだすことにもつながる。つまり、教育界では、女性労働の実態に先駆けて、1960年代に「女子特性論」が台頭し、「家庭」重視とそのための女子への配慮という言説が強固なかたちでつくりだされていた。学校教育の担い手である女性教員たちはこうした言説に相反して継続就労の道を歩み、1970年代には育児休業制度の制度化も実現させたのである。
この意味において、日教組婦人部の産休保障および育児休業の制度化という運動の達成は重要である。だが、1970年代のウーマン・リブ運動の台頭以降、当時の運動は、母性保護を主張したという運動の象徴的な点だけを捉えられて、男女平等を阻害したという評価を受けてきた。この影響もあってか、日教組婦人部は結成時から、女性教員の継続就労を要求してきた重要なアクターであるにもかかわらず、その運動過程は管見の限り明らかにされてこなかった。
そのため、本書は、日教組婦人部資料および当事者への聞き取り調査によるデータを用いて、女性教員の運動過程を、当時の女性運動を牽引した言説、政党の動向、他の運動の到達点との関係から再構成することを試みた。こうした問題関心から進めた本書の分析結果、本書執筆後に進めてきた研究、および、今後の課題を提示し、皆様からのご意見を賜りたい。
〔跡部千慧氏 記〕
第646回例会(オンライン実施)跡部千慧氏の研究発表【プログラム・ノート】
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