日本教育史学会

日本教育史学会は1941年から毎月の例会を開始し、石川謙賞の授与と日本教育史学会紀要の刊行を行う、日本の教育の歴史についての学会です。

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第652回例会(オンライン実施)八鍬友広氏の研究発表【プログラムノート】

第652回例会(オンライン実施)八鍬友広氏の研究発表【プログラムノート】

<第652回例会>
*日 時:2022年6月25日(土曜日)  午後3時~5時 (オンラインで実施)
*参加事前登録の締め切り:2022年6月22日(水曜日)  午後11時59分
*参加方法は、p.3「インターネット上での例会参加の事前登録について」をご覧ください。

*プログラム:
☆近世越中氷見町における一商人の生活史とその歴史的位相-田中屋権右衛門『応響雑記』の資料的可能性-
                                          八鍬 友広氏

【プログラム・ノート】
本発表は、越中射水郡氷見町における田中屋権右衛門の生活史の一端について、同人の記した『応響雑記』をもとに紹介し、同資料が有する多面的な可能性、および同資料にもとづいた今後の研究課題について検討するものである。
 『応響雑記』は、田中屋権右衛門が記した日記である。文政10年(1827)5月28日から書き始め、安政6年(1859)10月17日に擱筆している。その間32年におよび、権右衛門24歳から56歳までの記録となっている。
『応響雑記』には、権右衛門がおこなったさまざまな文化的な営為や娯楽、観覧した興行などについて詳細に記されている。文化的な活動は、俳諧、和歌、漢詩、狂歌、絵画、謡、生け花など多岐にわたっており、観覧した興行も軍書語り、能、浄瑠璃、芝居、相撲など、これまた多岐にわたっている。関心をもった書籍についての記録もあり、また儒学に関する講釈を聴聞した様子なども記している。
 文化的な活動だけでなく、日常的に接した情報や人間関係、仕事での金沢への出張などについても克明に記されており、それだけに『応響雑記』は、これまでもさまざまな視点からの研究に活用されてきた。たとえば、有感地震データベースなどへの活用は、その一例と言える。また竹下喜久男『近世地方芸能興行の研究』(清水堂出版1997年)や、梶井一暁「近世僧侶における町人との交わり」(辻本雅史編『知の伝達メディアの歴史研究』思文閣出版2010年)などをはじめとする、数々の研究において、『応響雑記』は取り上げられてきた。
 本発表においては、このような『応響雑記』の一端を紹介しつつ、個々の領域ごとの活動の記録としてだけでなく、一人の商人の生きた過程を、ある程度包括的に知ることのできる稀有な記録として、『応響雑記』の有する資料的な可能性を示したい。そしてそのような資料によって理解される一人の商人の生活史を、封建制や身分制といった社会編成の内実的な変容過程のなかに位置づけてみる可能性についても検討してみたいと考えている。              
                                   〔八鍬友広氏  記〕

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