<第681回例会>
*日 時:2025年10月25日(土曜日) 午後3時~5時 (対面で実施)
*会 場:学習院大学 北一号館2階教育学科模擬教室
*プログラム:『近代日本小学校教員検定制度史研究
―地方における試験検定・無試験検定制度運用と受験の実態―』の検討
井上 惠美子 氏
司 会 小野 雅章 氏
【プログラム・ノート】
報告者は、女性の中等教員の免許状制度と養成・採用の問題について研究をする中で、試験検定制度(寺﨑昌男・「文検」研究会編『「文検」試験問題の研究-戦前中等教員に期待された専門・教職教養と学習-』学文社、2003年)と、無試験検定制度(船寄俊雄・無試験検定研究会編『近代日本中等教員養成に果たした私学の役割に関する歴史的研究』学文社、2005年)の共同研究に参加する機会を得た。
その後、小学校教員検定制度に関する研究に着手することになり、2002年4月に小学校教員検定制度に関する最初の科研費(文部省科学研究費補助金基盤研究(B)(1)「戦前日本の初等教員に求められた教職教養と教科専門教養に関する歴史的研究-教員試験検定の主要教科とその受験者たちの様態の分析-」)を得、その後5年間のブランクを経て、丸山剛史氏が中心となって研究を継続し、共同研究のメンバーが若干変動しつつも、ようやく『近代日本小学校教員検定制度史研究―地方における試験検定・無試験検定制度運用と受験の実態―』学文社、2025年にまとめることができた。本書では、試験検定や無試験検定が、様々な機関・ルート(地方教育会、講習会、高等女学校補習科等)と絡み合いながら実施され、小学校教員免許状の取得と上進が各道府県において多様になされた諸相、そして免許状授与に際しての基準を解明した。
今回の例会では、本書に関して検討して頂くとともに、今後の小学校教員史研究の課題について議論できればと考えている。
【『近代日本小学校教員検定制度史研究―地方における試験検定・無試験検定制度運用と受験の実態―』の構成】
序章 小学校教員検定制度史研究の課題と方法 丸山 剛史
第1部 小学校教員検定制度の多様性
第1章 小学校教員検定制度の形成とその展開 釜田 史
第2章 小学校教員試験検定制度の成立と実施―明治期鳥取県の場合― 白石 崇人
第3章 小学校正教員試験検定受験者に求められた教育学的知識
―明治末期鳥取県の場合― 白石 崇人
第4章 「小学校教員無試験検定認定校」制度とは
―中等教員検定制度との比較を中心として― 井上惠美子
第5章 小学校教員無試験検定に関する事例研究―東京府の場合― 釜田 史
第6章 小学校教員無試験検定に関する事例研究―秋田県の場合― 釜田 史
第7章 高等女学校補習科の小学校教員養成機能―北海道の場合― 大谷 奨
第8章 京都府教育会の夏期・冬期学校と臨時試験検定 亀澤 朋恵
第2部 小学校教員検定制度利用の実際
第9章 昭和初期女性教員の小学校教員検定制度利用の事例研究
―埼玉・群馬県での受験― 内田 徹
第10章 静岡県における小学校教員検定制度利用の実際に関する事例研究 丸山 剛史
補 論 長野県小学校教員検定制度に関する資料と制度利用者の事例 丸山 剛史
(井上惠美子氏 記)