<第663回例会>
*日 時:2023年10月28日(土曜日) 午後3時~5時 (オンラインで実施)
*参加事前登録の締め切り:2023年10月25日(水曜日) 午後11時59分
*プログラム:
近現代天皇制と学校儀式の関係史概観――学校儀式の戦前・戦後――
小野 雅章 氏
司 会 高橋 陽一 氏
【プログラム・ノート】
本発表の目的は、報告者が本年4月に公刊した『教育勅語と御真影――近代天皇制と教育』(講談社現代新書、2023年)により得た成果と残された課題とを整理して、今後の報告者自身の研究の方向性一端を示すことにある。『教育勅語と御真影――近代天皇制と教育』では、幕末維新期から現代まで、天皇・天皇制を軸にして、この国の教育の史的展開の通史的展望を試みたが、史料の発掘を含めて精緻に論証するには至っていない点もある。なかでも、学校儀式を中心とする学校行事の通史的な分析はこれからの課題になっている。
近代学校制度成立以降、少なくとも教育勅語発布頃までは、学校儀式は天皇・天皇制教化のためだけのものではなく、それぞれに別途の目的があった。ところが、教育勅語発布以降、祝日大祭日儀式が法令によりその実施が制度化し、1900年の小学校令施行規則第28条により、三大節学校儀式が定型化されると、それ以外の学校儀式、すなわち、卒業式、入学式、始業式、終業式等の次第もこれに準じるものへと再編成された。
本発表では、上述の内容を確認したうえで、1900年代以降の主として小学校レベルの学校における天皇・天皇制教化のための学校儀式を中心とする学校行事が、それぞれの時代の要請による教育状況の変化に対応して、どの世のように変化したのか、この点について、学校儀式の「道具立て」としての教育勅語他教育関係詔勅、御真影、国旗、国歌ほか儀式用唱歌などの取り扱いなどを視野に入れつつ、これから進めようとする研究の展望を示したい。多くの方からの有益な批判を期待している。
基本文献や基本史料を検討している段階ではあるが、戦時体制下の学校を「場」とする天皇・天皇制教化の方式は、1920年代の教化総動員運動を下敷きしつつ、1930年代の国民精神総動員運動として、天皇信仰を強く強制するようになり、学校行事もその方向で改編されたとの仮説を持っている。当日は、戦後の学校行事に関しても論究できたらと思っている。
〔小野雅章氏 記〕