日本教育史学会

日本教育史学会は1941年から毎月の例会を開始し、石川謙賞の授与と日本教育史学会紀要の刊行を行う、日本の教育の歴史についての学会です。

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11月23日第673回例会(日本女子大学会場)宇津野花陽氏の研究発表【プログラム・ノート】

11月23日第673回例会(日本女子大学会場)宇津野花陽氏の研究発表【プログラム・ノート】

 <第673回例会>
*日   時:2024年11月23日(土曜・祝日)  午後3時~5時 (対面で実施)
*会   場:日本女子大学 目白キャンパス 百二十年館3階 現代社会学科 実習室
*プログラム:1950年代の高等学校学科家庭科における被服教育の展開
   ―衣生活の変容と教育・家庭・職業―
                 宇津野 花陽  氏
           司  会   天野 晴子  氏

【プログラム・ノート】
 戦後の教育改革において新制高等学校の家庭科は、普通教育の教科としての家庭科と専門教育を主とする学科としての家庭科(以下、「学科家庭科」)の二つに分かれて成立した。学科家庭科はその性格により小学科(家政、被服、食物、保育など)に分類され、戦後当初は被服、食物、保育が示されて、被服についてまとまったカリキュラムをもつ被服関係学科が最多であったが、1952年に家庭生活教育に重点を置く課程として家政関係学科(家庭課程)が設置されて以降は家政関係学科が最多となっていった。
 これまで、学科家庭科についての研究としては家政関係学科の研究が中心であった。また、家庭科および前身諸科目の裁縫、家事などについて、教育史研究では良妻賢母のイデオロギーに焦点を当てた研究、家庭科教育、家政学の研究では教科書など教育内容の分析から教育的意義を考察する研究が多く、実生活との関係において教育の実態を捉える研究は少なかった。
 本報告は、制度的に職業教育に位置づけられた被服関係学科の機能に焦点を当て、1950年代において専門的職業教育機能を広く持たなかった歴史過程を論証することを試みる。1950年代に着目するのは、戦前の女子教育において裁縫の占める割合が高かったために被服教育の施設・設備や教員が多かった時期であり、洋装化・既製服化という衣生活の大きな変化とともに家庭での衣服製作の時間が縮小する一方で女性の職業機会も増大するなか、学科家庭科の被服教育が専門的職業教育機能をもつとすれば最も可能性の高い時期であったと考えられるからである。
 各自治体における学科家庭科の設置状況、施設・設備や教員の配置、教育課程、卒業後の進路など被服教育の実態を明らかにするとともに、地域差や階層差にも留意しつつ衣生活をめぐる女性の職業生活と家庭生活の実態を解明した上で教育との関係について論証する。資料としては、学科家庭科関係の資料(文部(科学)省資料、都道府県教育史、高等学校/洋裁学校沿革史誌、高等学校家庭科教科書、洋裁学校テキストなど)、産業および職業指導関係資料(工業統計、商業統計、職業指導雑誌、新聞広告など)、生活時間資料等を用いる。
                   〔宇津野花陽氏 記〕

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