日本教育史学会

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2月22日第676回例会(学習院大学会場)佐喜本愛氏の研究発表【プログラム・ノート】

2月22日第676回例会(学習院大学会場)佐喜本愛氏の研究発表【プログラム・ノート】

 <第676回例会>
*日   時:2025年2月22日(土曜日)  午後3時~5時 (対面で実施)
*会   場: 学習院大学 北一号館2階教育学科模擬教室
*プログラム:小学校の兵式体操教具「木銃」「指揮刀」に関する教育史研究
        ―〈モノ〉からみた教育史研究―
                              佐喜本 愛 氏
                     司 会 須田 将司 氏

【プログラム・ノート】
 報告者は、教育史研究の中でも特に「モノ」「コト」からみた教育史研究に示唆を得て、小学校の兵式体操で使用された体操教具「木銃」と「指揮刀」という〈モノ〉に着目し、その取り扱いを通して小学校段階での兵式体操の実態解明を試みてきた。
 「木銃」という体操教具の使用とその普及はトップダウンのプロセスは経ず、文部省はその使用に消極的態度をとり続け、陸軍省も小学校の児童自らが銃を使用することを想定してはいなかった。それにも関わらず、各地の小学校に「木銃」は登場し、教科(体育)の時間や学校行事(儀式、運動会、遠足など)で使用され、学校の内外で人々の目に触れる教具となった。なぜなのか。年代や性別を問わず多くの人々の注目を集めたこの体操教具「木銃」「指揮刀」の使用には、当時の小学校教育を取り巻く人々(教員、地域住民、教材教具業界、軍隊関係者)の教育観、子どもの教育実践の諸相が表れているのではないかと考え、報告者はその視点から研究を進めてきた。
 具体的には、小学校の兵式体操に関する文部省および各地方の政策の展開を木銃に焦点をあてつつ明らかにし、兵式体操の指導にあたった担当教員の養成と彼らの銃についての考え方やニーズを分析するとともに、使用された木銃の種類、製造、販売の有り様を解明し、さらに木銃が実際にどのような場面でどのように使用されてきたのか(使用方法、維持・保管方法)を詳らかにした。加えて木銃と同時に用いられていた「指揮刀」にも研究対象を広げ、木銃、指揮刀を用いた兵式体操の具体像を示し、地域住民、企業(教材業者)、軍隊が連携しながら展開した近代日本における小学校教育の特質を論じた(『木銃の社会史-小学校教育における表象と国民形成-』(六花出版、 2021年刊行)。
 本報告では、その成果と残された課題を整理し、拙著刊行後に収集した史料紹介、研究の進捗状況を報告しながら、今後の研究の展望を示していければと考えている。
                         〔佐喜本 愛氏 記〕

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