3月25日第659回例会(オンライン実施)吉川卓治氏の研究発表 【プログラムノート】
<第659回例会>
*日 時:2023年3月25日(土曜日) 午後3時~5時 (オンラインで実施)
*プログラム:
☆専門学校令と私立医学校
吉川 卓治 氏
司 会 大戸 安弘 氏
【プログラム・ノート】
専門学校令は1903年3月26日に公布された(勅令第61号)。その第一条で「高等ノ学術技芸ヲ教授スル学校ハ専門学校トス/専門学校ハ特別ノ規定アル場合ヲ除クノ外本令ノ規定ニ依ルヘシ」と規定された。こうした「専門学校」の定義の仕方は他の学校令とは異なっていて、高等の学術技芸を教授する学校であれば、強制的に専門学校令に依拠させることになっていたと解されている(『現代教育史事典』)。最大手の医術開業試験の受験予備校で、野口英世や吉岡弥生が学んだことでも知られる私立済生学舎が専門学校令の公布直後に廃校となったこともしばしば併せて指摘されてきた。
専門学校令の成立過程やそれが私立学校に与えた影響などについては、倉澤剛や天野郁夫をはじめ多くの研究者が検討を重ねてきた。本報告は、これらの研究成果に学びながら、専門学校令がなぜ先述のような強制性を付与され、そのことはどのような事態をもたしたのか、ということを私立医学校との関係という視角から再検討しようとするものである。
予定している内容は以下のとおり。
第一に専門学校令の成立過程を改めて検討する。先行研究でその発端と指摘されてきた桂内閣での行政整理に加え、医師数の推移や医術開業試験の内務省から文部省への移管などを背景として押さえる。第二に専門学校令公布後の私立医学校の動向を明らかにする。これまで済生学舎が注目されてきたが、ここではそれ以外の私立医学校の動きに注目したい。そして第三に、専門学校令の厳格な適用を目指した文部省が方針転換を余儀なくされていたことを示したい。このことはこれまでほとんど見過ごされてきたのではないかと思われるが、専門学校令を評価する際には重要なポイントだと考えている。参加者のみなさんから多くのアドバイスをいただければ幸いです。
〔吉川 卓治氏 記〕