<第670回例会>【プログラムノート】
*日 時:2024年6月22日(土曜日) 午後3時~5時 (対面で実施)
*会 場:学習院大学北一号館2階教育学科模擬授業教室
*プログラム:占領期における大学学生自治組織の成立過程およびその活動
田中 智子 氏
司 会 上田 誠二 氏
【プログラムノート】
大学における学生自治組織は、政府・占領軍の民主化政策や学生たちの学園民主化運動の影響を受け、敗戦から数年の間に多くの高等教育機関において設立された。学生自治組織とは、当該大学の全学生をもって組織され、学内における学生たちの意思決定機関であるのみならず、学内外における学生運動の拠点でもあった組織のことである。学生自治組織は60年安保紛争や大学紛争など戦後の学生運動をリードし、特に大学紛争においては学生の自治権や学部の教育改革を大学側に認めさせる等、大学史上においても重要な存在である。
しかしながら、その発足に至る背景や過程については未だ解明されていない部分が多い。戦後の学生自治組織の歴史についての先行研究としては、①各大学の沿革史、②戦後学生運動史研究があげられる。①については多くの場合、戦後の組織再編、あるいは学生の歴史として概略が述べられている程度である。②については1970年前後の大学紛争期に書かれたものが多く、全日本学生自治会総連合(全学連)など学生自治会連合組織の歴史が中心であり、学生自治組織の結成についてはその前史としてわずかに述べられているにすぎない。それら先行研究における初期の学生自治組織の評価としては、所謂「ポツダム自治会」とみる(敗戦直後に政府・占領軍の指導によって設立されたと揶揄する)もの、あるいは戦後復活した日本共産党の指導を受けて活動を行なっていたとするものも少なくない。
しかし実際には、戦前期の自治活動・学生運動の影響や、戦後の民主化運動・占領政策、所謂「進歩的な」教職員の協力など、様々な要素が複合的に重なったことにより、戦後の数年間の間に全国的に学生自治組織が作られていったと考える。そこで本研究においては、大学学生自治組織成立に至る経緯および学生自治組織の初期の活動を、戦前期の学生自治の系譜、戦後の政府・占領軍の民主化政策、学園民主化運動、日本共産党および左翼学生団体の復活等、その背景にあると考えられる諸要素に言及しながら明らかにしていく。
本報告においては、前半では総論として明治期から第二次大戦後までの学生自治組織の系譜について、後半では各論として東京(帝国)大学・京都(帝国)大学・早稲田大学における戦後の学生自治組織の成立と初期の活動について述べていく。
〔田中智子氏 記〕