日本教育史学会

日本教育史学会は1941年から毎月の例会を開始し、石川謙賞の授与と日本教育史学会紀要の刊行を行う、日本の教育の歴史についての学会です。

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6月28日第679回例会(日本女子大学会場)樋浦郷子氏の研究発表【プログラム・ノート】

6月28日第679回例会(日本女子大学会場)樋浦郷子氏の研究発表【プログラム・ノート】

<第679回例会>
*日   時:2025年6月28日(土曜)  午後3時~5時 (対面で実施)
*会   場:日本女子大学 目白キャンパス 120年館3階 現代社会学科演習室
*プログラム:植民地支配/被支配のなかのジェンダー
-1920~30年代国内の中等・高等教育機関と朝鮮人イメージ-
樋浦 郷子 氏
司  会  小野 雅章 氏

【プログラム・ノート】
 報告者は近年、植民地における教育実態について、沿革誌等の学校文書などを用いて研究を進めてきた。そのなかで、日本の支配が直接届くのは男性で、間接的に届くのが女性である場合が多いのではないかという心象を持つようになった。
 例えば、植民地期朝鮮での1939年朝鮮民事令と関係法令の改訂(いわゆる創氏改名)では、家長が家の氏を届け出ることになっていたため、家のなかの年少者、女性の意見を表明する余地が小さかった(國分麻里「朝鮮人女学生と改名―1940~1945年の東萊高等女学校を中心として―」『日本の教育史学』63巻、2020年10月)。また、植民地期台湾では、公衆浴場で日本人の差別により台湾人と日本人とのトラブルが多かったとされる。しかし、台湾人の女性が公衆浴場を利用する割合は極めて低かった(平井健介「日本植民地における「同化」の経済的条件 ―台湾人の入浴習慣の変容―」『甲南経済学論集』61巻(3・4)、 2021年3月)。そのため、トラブルに直面する女性の割合も結果として少なかったと推定される。女性にとって植民地支配が「まし」だったと報告者が主張したいのではなく、家父長制と合わさった重層的な空間を生きざるを得なかったと考えられる。
 当日の報告では、ジェンダーと植民地に関わる上記の研究状況をふまえつつ、まず関東大震災後の日本国内において日本人が抱いた朝鮮人男性のイメージと朝鮮人女性のイメージを検討する。関東大震災においては、朝鮮人にかかわる流言と殺害事件に関わる蓄積が多いが、そのなかで性差を問う視点を持つ研究は、近年になって端緒が開かれつつある現状がある。次に、その後朝鮮人像はどのように展開するのか、とくに中・高等教育との関わりから素描したい。 
                      (樋浦郷子氏 記)

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