日本教育史学会

日本教育史学会は1941年から毎月の例会を開始し、石川謙賞の授与と日本教育史学会紀要の刊行を行う、日本の教育の歴史についての学会です。

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7月22日第662回例会(オンライン実施)松尾由希子氏・山下廉太郎氏の研究発表【プログラム・ノート】

7月22日第662回例会(オンライン実施)松尾由希子氏・山下廉太郎氏の研究発表【プログラム・ノート】

 <第662回例会>
*日 時:2023年7月22日(土曜日)  午後3時~5時 (オンラインで実施)
*プログラム:
 ☆「教育令期」における小学校教員のキャリア―長崎県の「履歴史料」より
               松尾由希子 氏  山下廉太郎 氏
        司  会   大戸 安弘 氏

【プログラム・ノート】
 近年期待される教員の資質能力のキーワードの1つとして、「学び続ける教員」があげられる。例えば中央教育審議会答申では、「教員が高度専門職業人として認識されるために、学び続ける教員像の確立が強く求められる」(2015年12月)、「令和の日本型学校教育」を担う教員として「教職生涯を通じて学びつづける」点(2022年12月)が示された。今回の報告は、明治期において教員制度の整備が進んだ時期といわれる「教育令期」の小学校教員の教職キャリア、具体的には任用時、任用以後の学習履歴及び職務歴の特徴について、長崎県小学校教員の「履歴史料」を用いて報告する。教員として任用される前後の学問的な研鑽、転退職にともなう職業的な経験の蓄積をキャリア形成ととらえて報告する。主な構成は以下のとおり。1「履歴史料」の特徴、2小学校男性教員の教職キャリア、3小学校女性教員のキャリア(任用時)
 明治期の教員のキャリア形成に関わる研究は、主に教育制度史の領域で教員資格に着目して進められてきた。ただし、制度の体系は必ずしも実態を反映しないため、教員のキャリア形成は制度と実態の双方から検討する必要がある。また、教員のキャリア形成について、実証的な研究が存在するものの、そのほとんどが任用までに求められたキャリアの解明にとどまっている。これまでの研究は終身雇用を前提とした単線型・職域内のキャリアパスを想定していたためだろう。本報告では、教員が転退職を繰り返しながらキャリア形成をしていく実態も示したい。さらに、本報告ではこれまでほとんどとりあげられてこなかった女性教員のキャリアにも着目する。文部省は女児の就学率向上のために女性教員が必要であると考えていたが、女性蔑視や女性教員に対する厳しい評価もあったためか、教員不足は解消しなかった。そのような中、どのようなキャリアを有する女性が小学校教員になるのか。男性教員のキャリアとも比較しながら、少ない事例になるが特徴を示す。
 本報告は「履歴史料」を用いた研究になる。「履歴史料」とは、「当時の学業、賞罰等の経歴及び出自について公的に記録・証明する文書」(池田雅則、松尾、山下2016)である。今回の報告では「履歴史料」の中でも、履歴書と辞職願をとりあげる。報告者は「履歴史料」の可能性や効果的な活用について検討、模索しているため、当日は詳細に史料を提示しながら報告したい。(松尾由希子記)
         〔松尾由希子氏・山下廉太郎氏 記〕

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