日本教育史学会

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7月26日第680回例会(学習院大学会場)雨宮和輝氏の研究発表【プログラム・ノート】

7月26日第680回例会(学習院大学会場)雨宮和輝氏の研究発表【プログラム・ノート】

 <第680回例会>
*日   時:2025年7月26日(土曜)  午後3時~5時 (対面で実施)
*会   場:学習院大学 北一号館2階教育学科模擬教室  
*プログラム:大学令下における「非昇格」仏教系私学に関する一考察
       ―臨済宗大学の事例を中心に―
                         雨宮 和輝 氏
                    司  会  大島 宏  氏

【プログラム・ノート】
1918年の大学令によって、多くの私立専門学校(以下、私学と表記)が大学へと「昇格」することを選択した。それら私学の中でも、大学昇格に際して、宗教団体を母体とする宗教系私学では、従来,教義の教授を中心とした聖職者養成が教育の中心であったために、教育方針及び教育内容の面で大きな変化が求められた。特に仏教系私学は僧侶養成に重点が置かれていた教育を、どのように変化させるのかが大きな課題となった。
大学令下で大学昇格した私学の類型を見ると、多くの仏教系私学が大学昇格を果たしたことがわかる。ただ、全ての仏教系私学が大学昇格したわけではない。では、「昇格」した仏教系私学と、「非昇格」となった仏教系私学との差異はどのような点にあったのか。また、「非昇格」となった仏教系私学の要因はどのようなものであったのかを分析する。これらの課題について、これまで筆者が考察してきた仏教系私学との比較を通して、昇格の是非を巡って仏教系私学が目指していた教育、つまり、学生への教義の伝授や、人格・倫理観の形成、人材養成も含めた教育とはどのようなものであったのか、そして、「非昇格」を選択したことで、いかなる教育機関としての発展を望んだのかを明確にする。
今回の報告では、「非昇格」事例の一つとして臨済宗大学(現在の花園大学)を取り上げる。大学昇格にとって最も大きな障壁となったのは、高額な国庫への供託金であるが、仏教系私学においては、母体となる教団や信者の寄付などから、非宗教系私学よりも比較的容易にその障壁は克服できている。無論、全ての仏教系私学が同様に財政問題を解決できたわけではないが、臨済宗大学がなぜ「非昇格」となったのか、その内実を明確にすることにしたい。
臨済宗大学の大学昇格の動向に関しては『花園大学三十年のあゆみ』(1979年、花園大学三十年史編集委員会)にも記載されているが、概略的な記述に留まっている。そこで、母体である妙心寺派の宗務本所から発行されている雑誌『正法輪』を中心に、その他、臨済宗大学内部の団体から発行された雑誌、さらに宗会における会議録を対象として、宗門内部の動向を分析する。
以上のような資料を用いて、本報告ではその上で、「昇格」と「非昇格」の仏教系私学との間には、どのような差異があったのか、また、「非昇格」の要因についても考察するようにしたい。その上で、「昇格」と「非昇格」の仏教系私学の比較を通して、仏教系私学ではどのような教育が目指され、いかなる人材養成が実施されようとしていたのかを考察するようにしたい。
                     (雨宮和輝氏 記)

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