日時:2015月7月25日(土曜日)午後3時から5時
会場:謙 堂 文 庫 「池袋駅」「目白駅」下車 徒歩約7分
〒171-0021 東京都豊島区西池袋2-21-15
プログラム:成瀬仁蔵の人格教育に関する一考察―「実践倫理」講義に着目して―
長野 和子 氏(日本女子大学)
【プログラム・ノート】
日本女子大学校(現日本女子大学)は成瀬仁蔵によって1901(明治34)年に設立された。設立に先立ち成瀬は、1896年に著作『女子教育』を上梓し、女子高等教育の重要性と必要性を広く社会に訴え、女子大学設立運動を展開した。『女子教育』において成瀬が最も強調したことは、女性を「人として、婦人として、国民として教育する」ということであった。中でも「人としての教育」つまり人格教育、品性の教育が何より重要な理念であると主張した。
日本女子大学校設立後、成瀬は校長となり「実践倫理」講義を担当した。「実践倫理」講義は全学年必修の科目であり、人格を養うための最重要の科目とされ、すべて成瀬によって行われた。「実践倫理」講義は成瀬が目指した人格教育の実践の場であったということができるであろう。この「実践倫理」講義で人格、品性を養うための第一歩として成瀬が最も強調したのは、自分で考え、自分自身で物事をなす事であり、これを成瀬は「自修自奮」と表現した。
本発表は成瀬が最も重要とした人格教育とそれを養うための「自修自奮」に着目し、成瀬の人格教育の特長を明らかにすることを目的とする。
方法としては、当時人格、品性、倫理などがどのように捉えられ、議論されたのかを知るために『丁酉倫理会講演集』を取り上げ、成瀬の著作『女子教育』や「実践倫理」講義の記録である『実践倫理講和筆記』等と比較検討する。『丁酉倫理会講演集』は、1900年に倫理研究会として結成された「丁酉倫理会」の会員による講演を纏め、出版されたものである。会員は主に東京帝国大学哲学科出身の青年たちであり、過渡期にある日本の国民道徳を向上させることが設立目的とされた。
〔長野和子氏 記〕