日本教育史学会

日本教育史学会は1941年から毎月の例会を開始し、石川謙賞の授与と日本教育史学会紀要の刊行を行う、日本の教育の歴史についての学会です。

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2017年1月28日(土) 第609回例会:田嶋一氏【プログラム・ノート】

2017年1月28日(土) 第609回例会:田嶋一氏【プログラム・ノート】

日時:2017月1月28日(土曜日)午後3時から5時

会場:立教大学 池袋キャンパス 12号館2階会議室
   〒171-8501 東京都豊島区西池袋3-34-1

アクセス:「池袋駅」下車 西口より徒歩約7分

プログラム:1920年代の青年たちの自立への希求と自由大学運動
田嶋 一 氏(國學院大學)

【プログラム・ノート】
 今回の報告では、「青年の自立と教育文化」の問題を、1920年代の自由大学運動を手がかりにして考察してみたいと思います。
 かつて私は、「青年期の誕生」という論文を書いたことがありました。ここでは、日本の青年の歴史をとらえるために青年期の三層構造というパラダイムをつくってみました。その後、この論文をふまえて「<青年>の社会史―山本滝之助の場合」、「修養の社会史(1)―修養の成立と展開」「修養の社会史(2)―修養の大衆化についての事例研究」等の論文に取り組みました。一連の仕事の中で、近代日本の青年たちは自立することを求め続けてきたこと、青年の自己形成の問題と修養、教養の問題は深く繋がっていたこと、などを確信することができました(これらの論文は拙著『<少年>と<青年>の日本近代―人間形成と教育の社会史』東京大学出版会、2016、に収めました)。
 「修養の社会史(1)」では、青年の自己形成上の重要な概念となった<修養>と<教養>の成り立ちを私なりに素描し、両者の関係をとらえてみようと試みました。そして、文明開化期にcultivateの翻訳語として産み出され、青年の自己形成のキーワードとなった修養の用語と概念が、その後不幸にも<修養>と<教養>の二つに分かれてしまったことや、それぞれが青年の階層化に対応した独自の自己形成概念としての特徴をもつようになったことなどについて、理解を深めることができました。同時にこの論文の中で、青年期の人間形成のためのこのふたつの概念が一つのものに統合される可能性を示した運動として、私は自由大学運動に着目し、論文の中でこの運動に内在した未発の契機についての仮説的な見解を提出しておきました。この仮説を、三層構造論のパラダイムを生かしながら、青年たちの実態や願いに即して実証してみたいと考え、私はその後、「啓明会の教育運動と農民自由大学の構想―青年の自立と教育文化」(『國學院大學教育学研究室紀要』第50号、2016)をまとめてみました。ここでは師範学校出の教師たちの青年としての自立の軌跡を、農村青年の教育運動とからめて追ってみようと考えました。さらに続けて、今回、「1920年代の青年たちの自立への希求と自由大学運動」(『國學院大學教育学研究室紀要』第51号掲載予定、2017)という論稿をまとめてみました。「修養の社会史(1)」で提起した、自由大学運動の中では地域に生きる青年たちの自己形成の希求と都市知識人の新しい教養論が合流しようとしていたという仮説を、レンズをマクロからミクロに代えて、実際に確かめてみようと考えて取り組んだものです。
 今回の報告では、この論稿に取りかかってわかってきたこと、考えてみたことなどを報告させていただくことにしたいと思います。自由大学研究は、1970年代に入って自由大学研究会のメンバーを中心に盛んに行われ、大きな成果を上げています。その成果に学びながら、この運動に参加した青年たちの心の中に入り込んでみるとどんなことがわかってくるのか、青年たちのまなざしに私のまなざしを重ねてみるとどんな世界が見えてくるのか、などということを考えつつ、近代日本の青年期教育の歴史上きわめて重要なこの運動を「青年の自立と教育文化」という視点から報告させてもらうことにします。
 報告の内容は、①研究上の視点および先行研究、②自由大学運動の担い手となった青年たちの自立への希求―上田自由大学と伊那自由大学、③メンターとなった人たちの自立の課題と教育文化、④整理、となる予定です。②では、この運動に参加した青年たちの残した記録を分析してみる予定。③で取り上げるのは、土田杏村と高倉輝の二人です。
 私の研究は、始まったばかりです。皆さんに経過報告をして、いろいろな角度から検討していただき、研究を次に進める手がかりを見出したいと思います。また、今回の報告を通して、「青年の自立と教育文化」の歴史をより深く豊かにとらえる方法を鍛えることができればありがたいと思っています。
〔田嶋 一氏 記〕

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