日時:2017月6月24日(土曜日)午後3時から5時
会場:立教大学 池袋キャンパス 12号館2階 会議室
〒171-8501 東京都豊島区西池袋3-34-1
アクセス:「池袋駅」下車 西口より徒歩約7分
プログラム:『戦後教員養成改革と「教養教育」』を刊行して
山崎 奈々絵 氏(聖徳大学)
【プログラム・ノート】
2017年1月に刊行した単著『戦後教員養成改革と「教養教育」』の内容や刊行を通して改めて考えてみたことなどを発表したい。
本書は、2014年3月にお茶の水女子大学大学院より博士号を授与された学位論文「戦後初期の教員養成改革―「大学における教員養成」の成立と一般教養の位置づけ」を加筆・修正したものである。そして本書の目的は、「一般教養を重視して『師範タイプ』を克服する」という改革当初の理念が教員養成系大学・学部では発足当初から実質が伴っていなかったことを明らかにすることである。主な対象時期は、敗戦直後から1950年代前半である。
師範タイプ(あるいは師範型・師範気質など)とは、師範学校で養成された小学校教員を低く評価した言葉で、視野が狭い、国家権力に従順で統制されやすい、学力が低い、鵜屈しているというようなさまざまな意味で1900年頃から用いられてきた。師範タイプを生み出した実際の原因は師範学校や師範教育だけにあるわけではないが、戦後改革では師範タイプと師範学校・師範教育が否定され、新たに大学で学問や幅広い教養を重視して、幅広い視野を備えた自律的な教員を育成しようとした。ところが、師範学校を再編して発足した教員養成系大学・学部では当初から、改革時の理念が顧みられず、一般教養は軽視されていくことになった。
戦後初期の師範学校では、一般教養とは文科・理科を幅広く学修することであり、それが小学校の教科専門教育(師範教育)と混同され、また、戦前の中等教員養成とも混同されていた。また、小学校の免許状とあわせて新制中学校の免許状も取得する学生あるいは取得させる学校が主流であり、したがって幅広い学修とあわせて特定の教科について深く学ぶ必要があった。戦後教育改革の方向性を定めた教育刷新委員会においても養成現場の師範学校においても、全科担任の小学校教諭と教科担任の中学校教諭をあわせて養成すべきか、養成できるのか、といった点は本格的に議論されないまま、小中両方の免許状(しかも中学校は複数教科の免許状)をあわせて取得するという実態ができあがっていくなかで、一般教養は小学校の教科専門教育(師範教育)と混同され、教員養成では教科専門教育を幅広く行うのだからことさら一般教養重視を強調する必要がない、ということになっていった。このように、一般教養が小学校の教科専門教育(師範教育)と混同されたからこそ、一般教養重視といった理念は限られた時期に一定の説得力を持ち、同時に一般教養の軽視にもつながっていった。本書は、こうしたことを大学所蔵の一次史料などを用いて描き出した。
〔山崎 奈々絵氏 記〕