日時:2017月7月22日(土曜日)午後3時から5時
会場:立教大学 池袋キャンパス 12号館2階 会議室
〒171-8501 東京都豊島区西池袋3-34-1
アクセス:「池袋駅」下車 西口より徒歩約7分
プログラム:戦後夜間中学校と学齢超過者
大多和 雅絵 氏(横浜市職員)
【プログラム・ノート】
わたしはこれまで、戦後夜間中学校(以下、夜間中学校)を対象とし、とりわけ1970年代の夜間中学校の動きに着目し研究を進めてきた。夜間中学校に関するこれまでの研究は、尾形俊雄・長田三男や田中勝文などの研究に代表されるように1960-70年代に書かれたものが多く、それらが長らく主要な先行研究となってきた。近年では、浅野慎一や江口怜により1950-60年代頃の夜間中学校について改めて研究が進められてきているが、1970年代以降の夜間中学校の動きを十分踏まえて系統立ててまとめた研究というのは発表されていない状態であった。そのような状況下で、博士論文「戦後夜間中学校に関する歴史的研究―学齢超過者の権利保障の問題を中心に―」(2016年3月)は、1970年代以降の夜間中学校の動きに着目し、夜間中学校がいかなるものとして成立しているのか、その歴史的経緯と存立のメカニズムを学齢超過者の教育を受ける権利をめぐる動きに着目し論じたものとなった(『戦後夜間中学校の歴史―学齢超過者の教育を受ける権利をめぐって』六花出版より6月末に刊行予定)。
わたしは夜間中学校のその開設初期の歴史というよりは、今日までの「存続」という歴史に関心を寄せ研究を進めてきたのだが、夜間中学校の今日までの存続にかかわる重要な変化が1970年代に起こったものと考えている。この時期の最も重要な変化として、教育対象者の移行が挙げられる。夜間中学校は1950年代には学齢生徒を対象として開設されたが、1970年代には学齢超過者(本発表では、学校教育法第17条で規定されている保護者が子にたいし就学させる義務を負う年齢を過ぎた義務教育未修了者を示す)を対象とする教育機関へと変容した。このことにより、夜間中学校を通して公教育とりわけ義務教育制度のなかでひとつの重大な問題が浮かび上がってくる。それは、義務教育未修了者・学齢超過者の存在である。
本発表では、博士論文と近刊予定の著書のなかで明らかにした夜間中学校を通してみえてきた学齢超過者の教育機会をめぐる問題を報告するとともに、これらの問題についてより考察を深めることを目的とする。
〔大多和 雅絵氏 記〕