日本教育史学会

日本教育史学会は1941年から毎月の例会を開始し、石川謙賞の授与と日本教育史学会紀要の刊行を行う、日本の教育の歴史についての学会です。

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2018年11月24日(土) 第626回例会:辻村修一氏【プログラム・ノート】

2018年11月24日(土) 第626回例会:辻村修一氏【プログラム・ノート】

日時:2018月11月24日(土曜日)午後3時から5時

会場:立教大学 池袋キャンパス 12号館 地下1階 第2会議室
   〒171-8501 東京都豊島区西池袋3-34-1

アクセス:「池袋駅」下車 西口より徒歩約7分

プログラム:綿紡績堯における女子従業員教育とその系譜―早稲田大阪学園向陽台高等学校勤労学習部の教育に着目して―
辻村修一 氏(早稲田大阪学園)

【プログラム・ノート】
 日本紡績協会の寄附行為により1962年に創設された学校法人 早稲田大阪学園(設立時学校法人 大阪繊維工業高等学校 1967年に大阪繊維学園に改称)は、現在2021年に向かえる60周年記念事業の一環として学園沿革史の編纂を行っている。
 日本紡績業界は、綿紡績業を牽引する中堅技術者の養成を目的として全寮制の大阪繊維工業高等学校を創設した。綿紡績業の急速な衰退と産業構造の変化に伴い、1974年に工業科を廃止し普通科高校に、2009年には早稲田大学の附属校となった。また、学園設立時以前から、綿紡績業界で重要な課題であった女子従業員教育のため、1964年に大阪繊維工業高等学校通信制(1967年向陽台高等学校と名称変更)が併設された。1969年に専修学校と連携した技能連携部(後に集団学習部に分化)、1989年には個人学習部(単位制)を設置、全日制高校とは違う後期中等教育を提供してきた。
 報告者は、現在、沿革史編纂とともに、2002年に役割を終えた「勤労学習部」の教育を教育学史研究の文脈で論じることを企図し準備を行っている。しかし、教育史の専門家ではないため会員の先生方からご指導いただくことを本報告の主目的とし、以下3点に言及する論考の「現在」を報告する。
1綿紡績業における教育の系譜
 先行研究を参考に本学園の教育が綿紡績産業における従業員教育の系譜上にあることを検証する。
2就職進学という進路を担保する教育
 辻智子氏(北海道大学)は、60~70年代にかけて「後期中等教育」を求めて地方から就職した女性労働者が『全国学校基本調査』における「就職進学者」というカテゴリーに属することに着目、その進路の位置づけと変遷について研究されている。辻氏の論考を参考に本校の教育が「就職進学」によるキャリア形成にどのように機能し、工場内寄宿舎における女子教育の目的を達成し得たかを学園史料をもとに考察する。
3教育の機会均等という観点
 向陽台高等学校勤労学習部は、1969年に入学者(6895名)のピークを迎える。この年全国の高等学校進学率は79.5%、進学者数は約130万人、就職者数は、約26.4万人、就職進学者数は約6万人で、他県への就職進学者数は約1.9万人であった(『学校基本統計』)。当時、経済的理由によって全日制高等学校に進学できない相当数の生徒が存在し、そういった子どもたちの「進学希望を叶えたい」という本学園創立の動機の一つが本稿の理念に強く反映されている。勤労学習部がその役割を終えた後も、全日制に進学できない/進学しない生徒の受け皿としての教育実践が現在のインクルーシブ教育にまで接続される道程を「教育の機会均等」という観点から考察する。
〔辻村修一氏 記〕

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