日時:2018月9月22日(土曜日)午後3時から5時
会場:立教大学 池袋キャンパス 12号館 2階 会議室
〒171-8501 東京都豊島区西池袋3-34-1
アクセス:「池袋駅」下車 西口より徒歩約7分
プログラム:1930年代東京市における小学校児童の参宮旅行の研究
橋本萌 氏(お茶の水女子大学博士後期課程修了)
【プログラム・ノート】
本報告は、学位論文の内容に基づき、その概要を発表するものである。報告者は2018年3月、学位論文『1930年代東京市における小学校児童の参宮旅行の研究』(未刊行)をまとめた。伊勢神宮参拝を主目的とした小学校児童の修学旅行(以下、参宮旅行)を対象にすることで、天皇制と教育に関わる一側面を解明しようとするものであった。
「参宮旅行」とは、伊勢神宮参拝を主目的とした小学校児童の修学旅行の通称である。参宮旅行は当該期、学校行事の一環として行われた。戦前日本の初等教育において学校行事は、1941年の国民学校令施行規則(第一条第六項「儀式、学校行事等ヲ重ンジ之ヲ教科ト併セ一体トシテ教育ノ実ヲ挙グルニ力ムベシ」)まで国レベルの規定はなかった。一方「儀式」に関しては1891年より規定があり、数ある学校行事の中で最も重要であった。「教育ニ関スル勅語」や御真影を用いた祝祭日儀式に加え、学校行事が国民教化の役割を担った。特に、初等教育の卒業段階にある児童を対象に伊勢神宮参拝を目的とした行事は特別なものであった。
本報告では1930年代の東京市で行われた参宮旅行を対象に、その拡大から終焉までの構造をとらえ、加えて実践場面における教育的意味について、いくつかの学校の事例をとりあげる。東京市は伊勢神宮より離れた地域にありながら、1930年代を通して伊勢神宮参拝児童数を拡大させた。関東地方の状況からみると、東京府は関東地方各県の参宮旅行に先行して拡大している。「帝都」として日本をけん引した都市が国民教化の一つとして参宮旅行に積極的に取り組む意味を考察することは、天皇制と教育の一端を究明する上で意義があると考えた。
〔橋本萌氏 記〕