日本教育史学会

日本教育史学会は1941年から毎月の例会を開始し、石川謙賞の授与と日本教育史学会紀要の刊行を行う、日本の教育の歴史についての学会です。

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2019年9月21日(土) 第634回例会:小野雅章氏【プログラム・ノート】

2019年9月21日(土) 第634回例会:小野雅章氏【プログラム・ノート】

日時:2019月9月21日(土曜日)午後3時から5時

会場:立教大学 池袋キャンパス 12号館 2階会議室
〒171-8501 東京都豊島区西池袋3-34-1

アクセス:「池袋駅」下車 西口より徒歩約7分

プログラム:旧開智学校所蔵史料の概要とその性格――国宝指定内定の一つの要因としての資料群
小野雅章 氏(日本大学)

【プログラム・ノート】
 2019年5月に文化審議会の答申により、旧開智学校校舎が国宝となることが内定となった。今回の国宝指定は、近代建築の遺構としての旧開智学校校舎の価値が認められたものである。国宝指定の答申理由について、文化庁は以下のように説明している。

  旧開智学校校舎は明治9年に建設された。漆喰塗の外壁を持つ2階建の屋根上に八角形の塔を載せる姿は、洋風を
  基調としつつ和風の伝統意匠を織り交ぜて、擬洋風建築特質 を濃厚に表す。内部には級別の教室や広い講堂を
  備え、学校建築として先駆的な計画性を 示している。近代の学校建築として初めての国宝指定となる。
                 (「報道発表 国宝・重要文化財(建造物)指定について」2019年5月17日)

 現存する擬洋風校舎で、最古のものは長野県佐久市旧中込学校校舎であり、旧開智学校校舎ではない。それにもかかわらず、今回国宝指定の答申がなされたのは、旧開智学校校舎の建築史における評価とともに、「学校建築として先駆的な計画性」を、旧開智学校所蔵の資料のなかから論証したこともその理由のひとつであった。教室数や面積、そこに設置された教具や学校家具の実態、具体的な教育実践の内容が、学校日誌、その他の文書資料、教授法書や教科書・掛図などの教材類から明らかできるのである。報告者は、建築史の研究者が典型的な擬洋風校舎であると判断した旧開智学校校舎で実施された具体的な教育の実態(級別の教室や広い講堂における教育実践)を、所蔵資料で論証できるため、文化庁が「学校建築としての先駆的な計画性」と評価した事がらの詳細とその具体像が明らかにできることが、他の擬洋風校舎にはない旧開智学校校舎の大きな特徴といえる。
 報告者は、今回、松本市教育委員会の依頼で、文化庁へ提出した報告書である『重要文化財旧開智学校校舎調査研究報告書』(重要文化財旧開智学校校舎、2019年)の作成の過程で、教育史の側から現行の全体を通読し、調整にあたった。この作業の一環として、旧開智学校所蔵資料についても再検証を行った。旧開智学校所蔵資料の調査は、1943年の開校70周年記念の記念事業である史料展覧会に際して、海後宗臣が監修者として参画する時点で3回にわたる史料調査を行ったことにより、その価値が全国的に認知されるようになった。その後、市制80周年の記念事業として『史料 開智学校』(全21巻)の出版が企画され、佐藤秀夫が監修者として参画した。この事業により、旧開智学校所蔵資料のなかの文書資料については、その全体像の把握と重要史料の翻刻出版が行われ、史料研究の到達点を示した。
 本報告では、旧開智学校の建築史の評価、および教育史的な特色を概観した後、海後宗臣・佐藤秀夫を中心に行われた旧開智学校所蔵資料の調査・研究の到達点を確認するとともに、今回の再検討により明らかになった、旧開智学校所蔵資料の調査・研究に関する残された課題と今後の方向性について、図書資料(教科書・教育書)、物具資料を中心に検討してみたいと思っている。
〔小野雅章氏 記〕

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