<第653回例会>
*日 時:2022年7月23日(土曜日) 午後3時~5時 (オンラインで実施)
*参加事前登録の締め切り:2022年7月20日(水曜日) 午後11時59分
*プログラム:
☆「文検図画科」の研究
亀澤 朋恵 氏
司 会 高橋 陽一 氏
【プログラム・ノート】
戦前期、日本の中等教員養成は高等師範学校、女子高等師範学校以外にも多様なルートが存在し、さまざまな背景をもった教員が教育現場を支えていた。戦前期の中等教員養成の全体像を明らかにするためには、その多様なルートの一つである国家検定試験制度「文部省師範学校中学校高等女学校教員検定試験」(通称「文検」)を解明することの必要性が長らく指摘されてきた。「文検」は「独学者の登竜門」といわれ、試験の合格率は10%前後の難関であった。佐藤由子による「地理科」(1988年)の研究を皮切りに、寺﨑昌男・「文検」研究会によって本格的に研究が進められ、1997年にはその研究成果として『「文検」の研究――文部省教員検定試験と戦前教育学』(学文社)が公刊された。さらに2003年には分析対象の学科目を拡充し、『「文検」試験問題の研究――戦前中等教員に期待された専門・教職教養と学習』(学文社)が公刊されたが、未検討の学科目を残したまま研究は休止された。その後、寺﨑らの研究を継承し、未検討の学科目の研究が進められてきているが、全体像は未だ明らかになっていない。本報告が対象とするのは、未検討の学科目の一つ「図画科」である。「図画科」を明らかにすることにより「文検」研究を深め、将来的には教員養成の歴史的展望に寄与するものと考える。
美術教育史的な観点からも、「文検図画科」は戦前期の中等図画教育の実態を明らかにするための一つの手掛かりになるであろう。「文検図画科」出身の図画教員は、中等図画教育界において図画教員養成の専門課程が置かれていた東京美術学校、東京高等師範学校出身の教員とならび、「我国中等図画教育界の三角形の一頂点」と自他ともに認める高い実力をもつ教員であったといわれる。彼・彼女らの「文検」受験の動機はどのようなものであったのか。図画教育に関するどのような力量を持っていたのか。その力量形成の過程(絵画学習の経緯、受験参考書や出版物、学習サークルなどの受験コミュニティ等)の内実等を明らかし、「文検図画科」が図画教員、図画教育界にとってどのように受け止められていたのか、検討を試みたい。本報告において「文検図画科」におけるこれまでの研究と課題を示し、皆さまの議論のきっかけになれば幸いである。
〔亀澤朋恵氏 記〕