日本教育史学会

日本教育史学会は1941年から毎月の例会を開始し、石川謙賞の授与と日本教育史学会紀要の刊行を行う、日本の教育の歴史についての学会です。

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第644回例会(オンラインで実施) 柏木敦氏の研究発表【プログラム・ノート】

第644回例会(オンラインで実施) 柏木敦氏の研究発表【プログラム・ノート】

 <第644回例会>
*日 時:2021年7月24日(土曜日)  午後3時~5時 (オンラインで実施)
*参加事前登録の締め切り:2021年7月21日(水曜日)  午後11時59分
*プログラム:
 ☆「小学校における就学の始期・終期弾力化の諸側面」
                                柏木 敦 氏
                     司  会   須田 将司 氏
【プログラム・ノート】
 1875(明治8)年文部省達第1号の学齢規定、そして1900(明治33)年第三次小学校令における学年の始期および終期の規定は、アジア・太平洋戦後の義務教育年限延長による学齢期間の見直しを除いて、原則として変更されることはなく今日に至っている。しかしながら実質的な制度変更は行われなかったものの、アジア・太平洋戦前期、就学の始期・終期を弾力化する二重学年制や学齢の見直しはしばしば検討されている。
 この点に早くから注目し、かつまとまった研究を行ったのは管見の限り渡部宗助であり、渡部『日本における二重学年制の導入・実施に関する歴史的研究』(平成九年度科研費報告書)は、関連する資料を広く収録し、渡部による論考も含まれたこの領域の基礎研究である。報告者は渡部の成果を起点に据えつつ、より踏み込んだ地域資料や制度政策関連史料を検討することよって、二重学年制や学齢の見直しに関する研究を進めている。
 これらいわば学校教育制度、特に初等教育制度の始期と終期との弾力化は、初等教育段階の早期入学・早期卒業、早期進学・早期就業、児童の多様な学習能力に対応することができるなど、その都度目指されたメリットが示されてきた。しかしながら学校教育制度の接続関係の確立、一年進級制の維持、制度変更による費用や教員配置の問題といった現実路線の前に、およそ表だった議論とはならなかった。また全国的な制度政策とは異なる範囲で、それなりに積極的な意図をもって二重学年制を導入した成城小学校や女子学習院においても短命に終わっている。
 とはいえ、日本の初等教育制度史上、それらの議論や試みが無意味であったとはいえない。繰り返し議論されたのは、学年制、学齢の弾力化が、近代学校教育制度の下での〝見果てぬ夢〟であったからということもできよう。であるとすれば、歴史的経験の中で、どのような必要があって学齢や学年の見直しが問題として提起され、またどのような理由からそれらが実現しなかったのか、何が見直しに優先されたか、といったことの検証を重ねる必要がある。
 報告者はこれまで1923(大正12)年から富山市で実施された秋季学年制の導入・廃止に至る経緯、秋季学年の進級状況や卒業者の就労状況、1914(大正3)年、教育調査会において検討された学齢規定の弾力化に関する議論を検討してきた。今回の報告では継続して収集している資料を紹介し、今後の研究展望を示したい。
              〔柏木敦氏 記〕

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