日本教育史学会

日本教育史学会は1941年から毎月の例会を開始し、石川謙賞の授与と日本教育史学会紀要の刊行を行う、日本の教育の歴史についての学会です。

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2015年11月28日(土) 第605回例会:多和田真理子氏【プログラム・ノート】

2015年11月28日(土) 第605回例会:多和田真理子氏【プログラム・ノート】

日時:2015月11月28日(土曜日)午後3時から5時

会場:立教大学 池袋キャンパス 12号館2階会議室
   〒171-8501 東京都豊島区西池袋3-34-1
   〔TEL:03-3985-4910〕

アクセス:「池袋駅」下車 西口より徒歩約7分

プログラム:学校所蔵資料の保存と研究利用について

多和田 真理子 氏(相模女子大学専任講師)

【プログラム・ノート】

私はこれまで地域の教育史を研究するなかで、主に長野県飯田市を対象に、小学校の所蔵する資料の調査や、旧村役場関係資料の調査などを行ってきた。また、自身もそれらの資料を用いて研究を行いつつ、利用環境の整備の在り方について考察してきた

そこで感じたのは、近年とくに個人情報保護の観点から、学校所蔵資料の閲覧について慎重になる事例が増えていることである。また、それらの資料の保存について具体的な方策がとられている事例は少なく、多くの文書が歴史的価値の吟味もされないまま廃棄・散逸の危機にある。たとえば学籍簿などは、その学区の地域社会構造に関わる重要な情報が多く記されているにも関わらず、個人が特定できる場合が多いため、利用が制限される場合が多い。さらに、個人情報漏えいのリスクを回避するため、定められた保存年限が過ぎたところで速やかに廃棄されてしまう場合も少なくない。

学校所蔵資料の歴史的価値についての判断は、ほとんどの場合管理者の裁量に委ねられている。結果として、明治期の資料などが貴重なものとして残される一方、戦後に作成されたプリント類などは廃棄の対象となりがちである。私たちにとっては「最近」に思われるため危機意識も薄いが、後の時代に検証しようにも資料がない、という事態も起こりかねない。

だが、私たちはそれらの資料を具体的に動かせる立場にはない。資料論の基本からいえば、なるべくその資料が発生した場所(または近い場所)で、多くの地域市民がアクセスできる環境に置かれることが望ましく、そのための環境整備が講じられるべきである。私たち外部の研究者は、資料の調査利用者としての立場から、どのような意見の発信や働きかけが可能であろうか。

今回の報告では、学校所蔵資料の保存に関して、これまで展開されてきた議論を整理し、問題点を解きほぐしたい。そして、教育史研究における資料の利用可能性を広げるために、私たちができることは何かを考えたい。

〔多和田真理子氏 記〕

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