日時:2016月2月27日(土曜日)午後3時から5時
会場:立教大学 池袋キャンパス 12号館第2会議室
〒171-8501 東京都豊島区西池袋3-34-1
〔TEL:03-3985-2166〕
アクセス:「池袋駅」下車 西口より徒歩約7分
プログラム:1930~40年代にかけての農村における「教育」―長野県下伊那地方の小学校における学校、家庭、地域社会の「連絡」に注目して―
山梨 あや 氏(慶應義塾大学)
【プログラム・ノート】
本発表の目的は、1930~40年代にかけての農村社会における「教育」のありようを、長野県下伊那地方の小学校における学校、家庭、地域社会の「連絡」に注目しながら明らかにすることである。発表者はこれまで、戦前から戦後にかけての長野県下伊那地方における読書活動とその教育的役割に関する研究を行ってきた。研究の過程で注目されたのは、戦後の読書活動に携わった人々の多くが、当該地域における戦前の小学校における教育経験(小学校における綴方や教員による本の「読み聞かせ」、青年団が小学校に協力した文庫活動)、さらには地域の「教育的雰囲気」に言及することであった。「教育県・長野」は学校教員の自負や世間一般の「ステレオタイプ」にとどまるものではなく、この地域で生まれ育った人々にとってはある種の「実体験」として認識されているのである。
ここで新たな課題として浮上するのは、当該地域における戦前から戦後にかけての「教育的雰囲気」とはどのようなものであり、それはいかにして醸成されたのか、という問題である。この問題を解くには、長野県下伊那地方において、小学校がどのような教育活動を展開し、それが地域社会においてどのような意義と役割を有していたのかを明らかにする必要がある。本発表では、1930~40年代の下伊那地方における小学校資料を分析することにより、当時の小学校におけるアクチュアルな「教育問題」と学校・教員側の取り組みを明らかにし、この課題に迫っていきたい。
具体的には、長引く経済不況や農村恐慌、社会主義思想を有する「赤化教員」弾圧として知られる「二・四事件」を経験する過程で、自覚的に「学校と家庭の連絡」という教育目標に取り組んだ下伊那郡上郷尋常高等小学校を事例として取り上げ、同尋常高等小学校の学校資料(「職員会誌」、「家庭訪問記録」ならびに「懇話会記録」及び地域資料(村報として発行されていた『上郷時報』)等を分析することにより、小学校が家庭、さらには地域社会とどのような「連絡」、協力関係を模索しつつ、当時の「教育問題」に取り組もうとしていたのか、一方で家庭や地域社会は農村における「教育」をどのように捉え、何を期待していたのかを明らかにしていきたい。
〔山梨 あや氏 記〕