日時:2016月3月26日(土曜日)午後5時から7時
※3月の例会は、教育史学会理事会と重なるため、午後5時開始となりますのでご注意下さい。
会場:立教大学 池袋キャンパス 13号館会議室
〒171-8501 東京都豊島区西池袋3-34-1
アクセス:「池袋駅」下車 西口より徒歩約7分
プログラム:ワークショップの概念史―海後宗臣の教育学理論と実践を手がかりに―
高橋 陽一 氏(武蔵野美術大学)
【プログラム・ノート】
ワークショップという用語が21世紀に入ってから再び広がっている。現在も言語活動やアクティブ・ラーニングなど学習方法の見直しの動きから、学校現場でも急速に浸透している。ワークショップがアメリカの進歩主義教育運動の産物として新しく定義し直された用語であることは、多くの実践者に知られているが、しかし、「研究集会」をワークショップの日本語訳とした戦後教育改革における移入など、日本における歴史的経緯が忘れ去られている。
本報告は、ワークショップという用語について用例的研究を歴史的に検討する必要を述べるとともに、さらにその機能と実態を解明する必要があることを、概念史として提起するものである。そのため、日本最初のワークショップといえる1947(昭和22)年の海後宗臣の実践事例に注目して、戦後教育改革における定着過程を検討する。海後宗臣自身はワークショップという概念の詳しい説明をしているわけではないが、海後の実践を言及した大照完『教師のワークショップ』1950年をはじめとして、戦後教育改革におけるワークショップの手法や影響を述べた様々な言説から、同時代の新概念の理解を明確にしたい。
さらに、報告者がすでに『ワークショップ実践研究』2002年などにおいて提起したワークショップの概念論を踏まえて、改めて海後宗臣の教育概念に注目する。彼の陶冶、教化、形成という周知の概念が、ワークショップ概念の再検討に寄与することを論じたい。海後宗臣自身が、ワークショップそのものの定義を述べたわけではないが、ドイツ教育学をもとに総力戦のための教育学を構想した彼の学説に、戦後教育改革をリードした優位性がどのようにあったのかを明らかにする。
このように海後宗臣の教育学理論と、彼自身のワークショップ実践を手がかりとすることで、現在の流行とさえ言えるワークショップという言葉を、教育学の概念や教育史上の対象として明確に位置づけることが、本報告の目的とすることである。
〔高橋 陽一氏 記〕