日本教育史学会

日本教育史学会は1941年から毎月の例会を開始し、石川謙賞の授与と日本教育史学会紀要の刊行を行う、日本の教育の歴史についての学会です。

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12月23日第665回例会(オンライン実施)山崎奈々絵氏の研究発表【プログラム・ノート】

12月23日第665回例会(オンライン実施)山崎奈々絵氏の研究発表【プログラム・ノート】

 <第665回例会>
*日 時:2023年12月23日(土曜日)  午後3時~5時 (オンラインで実施)
*参加事前登録の締め切り:2023年12月20日(水曜日)  午後11時59分
*プログラム:
 ☆:戦後初期の義務教育教員養成における教育実習
                              山崎奈々絵 氏
                    司  会  須田 将司 氏

【プログラム・ノート】
 報告者は戦後教員養成に関心を持ってきたが、とくに近年は、戦後初期の教育実習についての研究を進めてきた。
 戦後教員養成改革は、視野が狭い、教え方や人間性において型にはまっている、学力が低い、視野が狭い、国家権力に従順で統制されやすいといった多様であいまいな意味を持ってきた師範型を克服することが課題であった。こうした課題のもと、やり方によっては教え方の型にはめる役割を大いに担いやすい教育実習をいかに改革するかは重要だった。教育実習は、ほぼ唯一、学校の実際から学ぶ科目であったため、実習を通して学ぶ実際と他の科目を通して学ぶ理論をどのように関連づけていくか、教職専門教育の中にどう位置づけるか、養成教育全体にどう位置づけるかなどをめぐり、再検討を迫られた。そもそも教育実習は、大学の科目であるにもかかわらず、大学の外にある実習校に内容や評価の多くを依存せざるを得ないため、たとえば実習校の負担をどう捉えるか、実習生の中には教職に就職しない者もいるという現実をどのように捉えるか、実習を通して何を学ぶかといったことをめぐり、大学側の論理とは異なる論理が強調され、看過できない場合も多い。
 教員養成は、大学、実習校、行政、国家など、多様なアクターが絡み合う構造的特質を持つが、教育実習はそれが顕著である。多様なアクターが絡まり合う中で教育実習のあり方が決まっていくプロセスやそこでの課題などを時代状況に即して明らかにしていくことは、教育実習だけでなく教員養成全体の実態や到達点、課題を時代ごとに整理していくことにつながるのではないか。
 先行研究を見ると、教育実習については概説的なもの、教職専門教育に関する研究の中で言及されてきたもの、少数の事例研究などに限定されており、十分な蓄積がされていない。これに対し、報告者は2021年の論稿で、多様なアクターに着目した研究や具体的な事例研究、実習校(大学附属も含んで)の実際に着目した研究、戦後から現在までキーワードとして繰り返し浮上している「観察・参加・実習」の詳細や実際に着目した研究などを今後進展させて必要があるのではないかと述べた。こうした課題意識のもとで近年進めてきた報告者の研究について報告をしてみたい。
                               〔山崎奈々絵氏 記〕

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